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 平成23年第5回定例会 【意見書】

定期接種に関し,早期に国の制度確立を求める意見書

(23年10月31日提出)

 子宮頸がん予防ワクチン等の3種のワクチン接種緊急促進事業は,平成22年度補正予算成立の11月26日から平成23年度末までの時限措置として実施されてきたが,ヒブワクチン及び小児用肺炎球菌ワクチンについては,一時停止時期があり,子宮頸がん予防ワクチンについても,当初,供給不足が発生するなど,接種時期の問題もあり,当該対象者に十分行き渡ったとは言えない状況である。
 また,VPD(ワクチンで防げる病気)として,上記3種のみならず,水痘など多くの疾病へのワクチンは,欧米では公費接種として認められているところであり,本来は,このような短期の臨時事業で終えられるものではなく,継続して公費負担で実施されることこそが,国民の健康維持増進に大きく力を発揮するものと言われている。
 既に,厚生労働省の予防接種部会では,これらVPDについてのワクチン定期接種化と日本の予防接種体制の改善を求め,法改正も提言されている。
 医療現場においては,子宮頸がん予防ワクチン接種が,既に平成23年度内には公費で3回接種できない段階に入っており,次年度以降の公費負担の取扱いについて,早急な判断を求める声が上がっている。
 よって国におかれては,地元自治体に負担を掛けることなく,国の財政支援を明確にしたうえで,早期に下記の制度を確立されるよう強く求める。
 子宮頸がん予防ワクチン,ヒブワクチン及び小児用肺炎球菌ワクチンについては,定期接種化までの間の臨時促進事業を継続すること。
 高齢者に対する肺炎球菌ワクチンを含むVPDに対する公費定期接種の継続及び拡大を図ること。
 安心して平等に受けられる予防接種体制を確立すること。
 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,厚生労働大臣


京町家の維持・保全に関する意見書

(23年10月31日提出)

 京都の伝統的な建築様式や生活文化を伝え,今もなお,職住共存の暮らしの場である京町家は,歴史都市・京都のまちのシンボルと言っても過言ではない。  
 しかしながら,相続時における負担などから年々その数が減少していっている。  
 地域コミュニティを大切にしてきた京都の町衆が代々受け継いだ文化や慣習を次世代に残せるように,また,次世代にマッチした新しい文化が生まれる土壌を作るためにも,その京町家の保全,再生は欠かせない。  
 平成23年度税制改革大綱では,相続税の基礎控除を60パーセント相当額に縮小すること,最高税率を55パーセントに引き上げること等が掲げられており,相続時に町家が消失する可能性が更に高まるものと考えられる。  
 よって国におかれては,相続人が,相続税の負担を原因として京町家の維持・保全を断念することがないよう,相続人に対し,京町家を維持・保全することを条件に,課税標準額に対する税率の引下げ,納税猶予の実施等の特別な優遇措置を講じるよう強く要望する。
 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,財務大臣


学校施設の防災機能向上のための新たな制度創設を求める意見書

(23年10月31日提出)

 学校施設は,児童生徒の学習・生活の場であるとともに,その多くは,災害時には地域住民の避難所となるため,学校施設の安全性・防災機能の確保は,極めて重要である。
 この度の東日本大震災においても,学校施設は,発災直後から避難してきた多くの地域住民の避難生活のよりどころとなったが,他方,食料や毛布等の備蓄物資が不足し,通信手段を失い,外部と連携が取れなかった等,学校施設の防災機能について様々な課題が浮かび上がった。
 文部科学省は,今年7月,「東日本大震災の被害を踏まえた学校施設の整備について」と題する緊急提言を取りまとめた。今回の大震災を踏まえ,学校が災害時に子どもたちや地域住民の応急避難場所という重要な役割を果たすことができるよう,今後の学校施設の整備に当たっては,教育機能のみならず,あらかじめ避難場所として必要な諸機能を備えておくという発想の転換が必要であることが提言されている。
 京都市においても,防災スクールウェルや太陽光発電,耐震貯水槽等を整備しつつあるが,国庫補助の対象が1校当たり1,000万円以上の事業に限定されているため,十分な整備が進んでいない現状である。
 よって国におかれては,今回のように大規模地震等の災害が発生した場合においても,学校施設が地域の拠点として十分機能するようにすべきであるとの認識に立ち,学校施設の防災機能の向上を強力に推進するために活用できる国の財政支援制度の改善及び財政措置の拡充に関する以下の項目について,速やかに実施するよう強く要望する。
 新増改築時及び大規模改造の際に整備することができるとされている貯水槽・自家発電設備等の防災設備の整備を単独事業化するなど,学校施設の防災機能向上のための新たな制度を創設すること。
 制度創設に併せて,地方負担の軽減を図るため,地方財政措置の拡充を図るとともに,耐震化事業同様の地方交付税措置を確保すること。
 学校施設の防災機能向上と共に,再生可能エネルギーの積極的導入を図るため,太陽光発電のみではなく,太陽熱,温
度差熱利用,蓄電池などについても補助対象を拡充すること。
 
 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,財務大臣,文部科学大臣,環境大臣


大規模災害時に備えた公立学校教職員派遣制度の創設を求める意見書

(23年10月31日提出)

 大規模地震や豪雨等の非常災害時において,被災地に派遣された教職員は,現地の学校現場における復旧支援に大きく貢献してこられた。
 この度の東日本大震災においても,学校機能の回復に向けた応急支援に加え,被災児童生徒の心のケアや学習の遅れに対する個別指導など様々な役割を果たし,その重要性が改めて認識されている。
 京都市においても,3月当初,1チーム5人体制6班30人の派遣,ボランティア休暇を利用した個人派遣や被災地要望に伴うスクールカウンセラーの派遣等を行ってきた。
 しかし一方で,大規模災害時における教職員の派遣について,国としての明確なスキームが存在していないため,今回の大震災では,派遣教職員の確保に当たり,派遣自治体と被災自治体間における職種面や人数面でのミスマッチや,教職員の派遣に係る費用負担の在り方等について,様々な問題が浮き彫りになっている。京都市においても被災地からの長期休暇要望について10人が待機をしたが,派遣は見送られた。
 こうした実態を踏まえ,先般,宮城県が国に対し,大規模な災害があった場合に備えて,被災地に応援派遣する教職員をあらかじめ登録しておく仕組みづくりを要望するなど,現在,被災地を中心に大規模災害時に備えた教職員派遣制度の構築を求める声が高まっている。
 よって国におかれては,大規模災害時に,被災自治体に対して全国の自治体から適切に教職員派遣を進めるため,公立学校教職員派遣制度の創設が不可欠であるとの認識に立ち,以下の項目について,速やかに実施するよう強く要望する。
 東日本大震災で明らかになった教職員派遣に関する諸課題について,阪神・淡路大震災 や新潟県中越沖地震など,過去の大規模災害時における事例も参考にしつつ,十分な検証を行うこと。
 大規模災害時における迅速かつ適切な教職員派遣を行うために,地方自治体による派遣教職員情報のデータベース化や被災地とのマッチング支援などを図る公立学校教職員派遣制度を創設すること。
 同制度の導入に当たっては,大規模災害時における教職員派遣に関する課題が克服されるよう,費用負担の在り方を明
記するなど,被災自治体の状況を踏まえた制度設計に努めること。
 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,文部科学大臣


受診時定額負担の導入に反対する意見書

(23年10月31日提出)

 国民皆保険制度は,国民が等しく保険料を支払い,それによりリスクの分散を図るものである。
 しかしながら,平成23年6月30日,政府・与党社会保障改革検討本部は,「社会保障・税一体改革成案」を決定し,その中で提示された社会保障改革の具体案として,高額療養費の見直しによる負担軽減と併せて受診時定額負担の導入が提案されている。
 この受診時定額負担は,医療機関を受診する度に,現在の定率負担とは別に,外来で受診する全ての患者に一定の定額負担を求めるものであり,受診頻度が多い者ほど負担増になる施策である。特に,多くの疾病を抱える高齢者にとっては,早期受診が阻害され,また,所得の差による受診機会の格差をもたらすおそれもあり,国民皆保険制度の根幹を揺るがしかねない。本来,高額療養費の見直しに必要な財源は,保険料や公費に求めるべきであり,患者に転嫁することは断じて認められるものではない。
 また,平成14年の健康保険法等の一部改正で,患者の窓口負担を2割から3割に引き上げられたが,その改正法附則において,「医療保険各法に規定する被保険者及び被扶養者の医療に係る給付の割合については,将来にわたり100分の70を維持するものとする。」との規定が明記されていることから,安易に公的医療保険の範囲を縮小するべきではなく,現行の範囲を堅持すべきである。
 よって国におかれては,全ての国民が公平な負担の下で,同じ医療を受けることができる国民皆保険制度を将来にわたって堅持するべく,受診時定額負担を導入しないよう強く求める。
 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,厚生労働大臣


エネルギー政策の転換の推進を求める意見書

(23年10月31日提出)

 我が国のエネルギー政策については,近年,原子力発電は,国内において欠かせない電力源として,温室効果ガス削減をも視野に入れて進められてきた。しかしながら,東日本大震災による福島原発事故を契機とし,日常生活や経済活動の維持,安定と同時に,安全な国民生活に配慮したクリーンエネルギーへのより一層の転換が喫緊の課題となっている。
 よって国におかれては,再生可能エネルギー,自然エネルギーの研究開発と普及に向けた政策推進を図るため,下記の事項について実現されるよう強く要望する。
 稼働中の原子力発電の問題点を更に検証し,徹底した安全対策を早急に図ること。
 環境問題にも配慮した再生可能エネルギー,自然エネルギーによる電力の安定供給を目指し,研究開発を推進する予算を確保すること。
 
 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,経済産業大臣,環境大臣,資源エネルギー庁長官


年金受給資格期間の短縮を求める意見書

(23年10月31日提出)

 昨今,無年金・低年金者の生活は脅かされ,社会問題となっており,膨大な数の無年金・低年金者の存在は,公的年金制度の大きな課題である。この課題を解決するためには,無年金者を多くしている原因の一つである長すぎる受給資格期間の短縮が必要である。
 よって国におかれては,年金受給資格期間の10年への短縮を速やかに実現されるよう強く求める。
 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,厚生労働大臣


電力多消費型経済からの転換を求める意見書

(23年10月31日提出)

 3月に発生した東日本大震災の影響もあり,日本経済の先行きは今後も予断を許さないうえ,東京電力福島第一原発の事故を受けて,エネルギー供給が制約される中で,長期的な電力消費の抑制が課題となっている。
 今夏,各家庭では,省エネ・節電対策を励行し,大口消費者である企業などでも,電力消費の抑制に努めた結果,電力の供給不足は回避された。
 しかし,この冬に向けて節電努力の要請が長引くと見込まれる中,現在のような個々の努力に委ねられている「節電対策」のままでは,社会全体の対応としては限界がある。
 そのため,これまでの「当面の対応」から脱却し,「電力多消費型」経済社会からの転換を図り,省エネ・節電対策を日常的・安定的に実施することができる社会を早急に実現する必要がある。
 よって国におかれては,電力消費低減対策に取り組むとともに,「電力多消費型経済」から転換していくため,次の事項について,早急に決定し,実施するよう強く要望する。
 家庭での省エネ・エコ化の早期推進のため,「節電エコポイント」(仮称)を創設し,省エネ型家電への買換え,LED照明の普及を促進すること。
 住宅エコポイントは,対象となる改修工事の範囲などを拡充すること。
 事業所,各家庭等における太陽光発電設備やLED照明の導入など,省エネ投資を促進するため,税制・財政・金融面で
の支援措置を講じること。
 
 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,経済産業大臣,国土交通大臣,環境大臣


円高・デフレを克服する経済対策を求める意見書

(23年10月31日提出)

 欧州での経済危機や米国の国債格下げ問題などを原因に,円高が歴史的な水準で進行している。日本経済は,円高・デフレ傾向が長期化し,東日本大震災による経済情勢の悪化も懸念されている。
  しかしながら,政府は,二度にわたる補正予算を編成しながら,それらは,本格的な復旧・復興につながる大規模な予算編成とは言えず,景気回復に向けた好材料とはならないものであった。さらに,電力需給のひっ迫が長期化し,円高傾向も続くことになれば,企業が海外に生産拠点を移すことは明白であり,雇用・産業空洞化が進行することとなるが,これまで政府は,具体策を示すことなく,産業界に任せきりと言わざるを得ない。
 また,現下の円高は,地域の製造業,観光業,伝統産業に大きな打撃を与えており,この状態を放置すると,地域経済は,悪化の一途をたどることとなる。
 よって国におかれては,「日本経済全体の復興が被災地の復興につながる」との考えの下,内需の拡大をはじめ,抜本的な円高・デフレ対策に取り組まれるべきであり,下記の事項について,早急に実現されるよう強く要望する。
 日本経済全体を底上げするための景気対策,防災対策のための必要な公共事業の推進などを含めた補正予算を早急に執行すること。
 年末に向けた中小企業の万全な資金繰り対策の拡充など,円高の痛みを直接受ける輸出産業への痛みを緩和する施策を打ち出すこと。
 外国人観光客の減少による観光業,伝統産業への支援策を打ち出すこと。
 地域の雇用の維持・確保に活用することができる臨時交付金を創設すること。
 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,財務大臣,経済産業大臣,内閣府特命担当大臣(経済財政政策),
観光庁長官


「子ども・子育て新システム」の撤回を求める意見書

(23年10月31日提出)

 政府は,7月29日の少子化社会対策会議において,「子ども・子育て新システムに関する中間とりまとめ」を決定し,「平成23年度中に必要な法制上の措置を講じることとされている税制抜本改革と共に,早急に所要の法律案を国会に提出する」との方針を示した。  
 新システムの導入は,保育現場に市場原理が持ち込まれることになり,福祉としての保育制度が維持されないことや,保護者の負担増につながる制度見直しとなるなどの懸念があり,国の責任で福祉として行われてきた保育制度の根幹が大きく揺らぐおそれがある。また,新システム導入に必要な約1兆円の財源は明確になっておらず,現状では,新システム導入は極めて不透明な情勢となっている。このままでは,平成25年度からの保育施策がどのような方向性になるのか明確ではなく,保育現場での無用な混乱や不安に拍車が掛かることとなる。  
 よって国におかれては,下記の項目について早急に実現を図り,誰もが安心して利用できる保育制度を維持・拡充されることを強く求める。
 
 子ども・子育て新システムについて,「今年度中の法案提出」との方針を撤回すること。
 保育制度の見直しにあっては,保護者,保育現場等の意見を十分尊重し,慎重に検討すること。
 来年度に向けて,「安心こども基金」の拡充等,保育の充実に向けた,地方の創意工夫が可能で生かされる来年度予算
編成を行うこと。
 
 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,厚生労働大臣, 内閣府特命担当大臣(少子化対策)


環太平洋パートナーシップ(TPP)への参加に関する意見書

(23年10月31日提出)

 政府は,11月に開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議において,環太平洋パートナーシップ(TPP)の交渉参加を表明する方針を示している。  
 TPPは,原則として全品目の関税を撤廃し,また,サービス貿易,政府調達,知的財産,人の移動等を包括的に協定するものであるが,政府において,TPPへ参加した場合の問題点の検討,分析が十分に行われておらず,農業だけでなく,金融や医療,保険など多分野にわたる影響についても検討を加えたうえで判断すべきである。
 よって国におかれては,拙速にTPPに参加することなく,慎重に対応されるよう強く要望する。
 
 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,外務大臣,農林水産大臣, 経済産業大臣


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