はじめに

京都市長 桝本頼兼

この度,京都市では,高齢者や身体に障害のある方などが,安全・快適に安心して移動できる交通環境を整えるため,市内の全ての旅客施設や車両及び旅客施設周辺の道路などを対象としたバリアフリー化推進の指針となる「京都市交通バリアフリー全体構想」を策定致しました。
この構想は,「高齢者,身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」,いわゆる「交通バリアフリー法」において市町村の責務とされている「重点整備地区」のバリアフリー化を進めるだけではなく,重点整備地区以外の駅や車両などについても,公共交通事業者などが計画的にバリアフリー化を進めていくために,京都市が独自の取組として策定したものであります。
また,この内容は,
1.計14地区を重点整備地区に選定した手順と,重点整備地区ごとの「移動円滑化基本構想」策定時期 
2.市内の全ての旅客施設や車両及び旅客施設周辺の道路などを対象とした「バリアフリー化推進に係る基本方針」と「長期整備プログラム」
を2つの大きな柱として,高齢者や身体に障害のある方などに対し,市民が積極的に手助けする「心のバリアフリー」の推進についても盛り込んでおります。
今後は,この構想に基づき,重点整備地区ごとに,順次移動円滑化基本構想を策定し,駅やその周辺の道路,駅前広場などのバリアフリー化を重点的,一体的に進めるとともに,重点整備地区以外の公共交通機関の各施設や道路などについても,公共交通事業者や関係行政機関などと連携し,できる限りバリアフリー化が進むよう,積極的に取り組んで参ります。
そして,だれもが京都の生活を楽しむことができる「ひとにやさしいまちづくり」を進め,くらしに「安らぎ」,まちに「華やぎ」のある京都のまちを実現して参ります。
結びに,この構想の策定に当たり,学識経験者,高齢者,身体に障害のある方,公共交通事業者及び関係行政機関からなる「京都市交通バリアフリー推進連絡会議」において熱心に議論・検討を重ねていただきました委員の皆様,並びに多くの貴重な御意見を賜りました市民の皆様に心から御礼申し上げます。

平成14年10月




「交通バリアフリー法」の基本的な仕組みについて説明します。

この法律の正式な名称は「高齢者,身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」といい,平成12年5月17日に公布され,11月15日に施行されました。

この法律の制定によって,国,公共交通事業者,市町村などには,様々な責務が生じました。

まず,国は,バリアフリー化のための施策を総合的かつ計画的に推進するため,「移動円滑化の促進に関する基本方針」を作成することとなりました。
この「基本方針」は,平成12年11月15日に作成されています。

次に,公共交通事業者は,旅客施設の新設や新車両の購入などを行う際に,「移動円滑化基準」というバリアフリー基準に適合させなければならないこととなり,既存の旅客施設や車両についても,「移動円滑化基準」に適合したものとなるよう,バリアフリー化に努めなければならないこととなりました。

さらに,市町村は,特に改善の必要性の高い旅客施設を中心とした地区を「重点整備地区」に指定し,「重点整備地区」ごとに,旅客施設やその周辺の道路,駅前広場などのバリアフリー化を重点的・一体的に推進するための「移動円滑化基本構想」を策定することができるようになりました。
この「移動円滑化基本構想」が策定されたときは,公共交通事業者,道路管理者及び都道府県公安委員会は,「移動円滑化基本構想」に盛り込まれた内容どおり,具体的な事業計画を作成し,平成22年までに,互いに連携し,集中的かつ効果的にバリアフリー化事業を実施しなければならないこととなりました。




「重点整備地区」の選定手順と,「長期整備プログラム」の構成について説明します。

「重点整備地区」は,旅客施設を中心とした概ね500メートルから1キロメートルの徒歩圏内の範囲を対象として定めることになっています。そこで「重点整備地区」選定の検討にあたり,まず,徒歩圏内に複数の旅客施設がある場合は,これらを1つの地区として捉え,市内の122の旅客施設について104の地区を設定しました。
次に,旅客施設における段差の程度や情報案内設備の整備状況などを点数化した客観的指標に基づいて全104地区を評価し,全市的な観点から,他の地区に優先して,バリアフリー化を図る必要性の度合がより高いと認められる30地区を「重点整備地区候補」として抽出しました。
そして,「重点整備地区候補」30地区について,詳細な改善方策の検討を行い,その結果,「移動円滑化基本構想」を策定することについて事業者との協議が整った14地区を「重点整備地区」に選定し,「重点整備地区」ごとに「移動円滑化基本構想」の策定時期を定めました。
京都市では,「重点整備地区」のバリアフリー化を推進するだけではなく,併せて「重点整備地区」以外の旅客施設,車両,そして旅客施設周辺の道路などのバリアフリー化を推進いていくため,その指針として,京都市独自のバリアフリー化の目標や具体的な改善方針などを定め,「長期整備プログラム」として取りまとめました。

この「長期整備プログラム」は,5つのプログラムで構成されています。

「重点整備地区」を対象とした,「重点整備地区」の整備プログラム。
「重点整備地区」以外の地区を対象とした,旅客施設単独の整備プログラムと旅客施設周辺地区単独の整備プログラム。
市内の全地区を対象とした,車両の整備プログラムとソフト施策その他の整備プログラム。
この5つのプログラムで構成されています。




地区の区分と「重点整備地区」ごとの「移動円滑化基本構想」策定時期について説明します。

まず,「重点整備地区」と「移動円滑化基本構想」策定時期について説明します。
「重点整備地区」は,14地区25旅客施設です。
移動円滑化基本構想の策定時期は,平成14年度から16年度までを前期,平成17年度から20年度までを後期としています。

前期の内,平成14年度に移動円滑化基本構想を策定する地区は,2地区4旅客施設で,阪急かつら駅があるかつら地区と,JRやましな駅・京阪やましな駅・地下鉄やましな駅があるやましな地区です。

平成15年度又は16年度に移動円滑化基本構想を策定する地区は,4地区8旅客施設で,阪急からすま駅と地下鉄しじょう駅があるからすま地区,阪急かわらまち駅があるかわらまち地区,JR京都駅・新幹線京都駅・近鉄京都駅・地下鉄京都駅がある京都地区,近鉄むかいじま駅があるむかいじま地区です。

平成17年度から20年度までの後期に移動円滑化基本構想を策定する地区は,8地区13施設で,JRいなり駅と京阪ふしみいなり駅があるいなり地区,京阪ごじょう駅がある京阪ごじょう地区,京阪ふじのもり駅がある京阪ふじのもり地区,JRさがあらしやま駅・けいふくさが駅前駅・さがの観光鉄道トロッコさが駅があるさがあらしやま地区,京阪しちじょう駅があるしちじょう地区,JRとうふくじ駅と京阪とうふくじ駅があるとうふくじ地区,近鉄ふしみ駅があるふしみ地区,近鉄ももやまごりょうまえ駅と京阪ふしみももやま駅があるももやまごりょうまえ地区です。

次に,「重点整備地区」以外の地区の区分について説明します。
「引き続き改善を検討する地区」は,7地区9旅客施設で,「重点整備地区候補」のうち,現時点において,旅客施設の段差解消を図ることが極めて困難であるため,引き続きその改善方策を検討していくこととした地区です。
おおみや地区,かたびらのつじ地区,さいいん地区,JRふじのもり地区,にしおおじ地区,ふかくさ地区,ろくじぞう地区がこれに該当します。

「事業者の単独整備地区」は,9地区13旅客施設で,「重点整備地区候補」のうち,情報案内設備の改善など,公共交通事業者が単独で改善を図っていくこととした地区です。
いまでがわ地区,からすまおいけ地区,きたおおじ地区,さんじょう地区,たんばぐち地区,まるたまち地区,ちゅうしょじま地区,でまちやなぎ地区,にじょう地区がこれに該当します。

「重点整備地区候補」以外の地区は,74地区75旅客施設です。
その内訳は,JR在来線では,さがの線と奈良線の5駅。
近鉄では,京都線の5駅。
京阪電鉄では,京阪本線・おうとう線・うじ線・けいしん線の9駅。
阪急電鉄では,京都線とあらしやま線の4駅。
けいふく電鉄では,あらしやま本線ときたの線の16駅。
えいざん電鉄では,えいざん本線とくらま線の16駅。
さがの観光鉄道では,2駅。
市営地下鉄では,からすま線と東西線の18駅。
そしてらくさいバスターミナルとなっています。




「バリアフリー化推進に係る基本方針」と「長期整備プログラム」について説明します。

まず,バリアフリー化推進に係る基本方針として,
一つ,移動そのものを断念せざるを得なくなるような障壁ともなる段差を解消することを優先した施設整備を進めます。
二つ,移動に制約のある人の特性に十分配慮し,段差解消を優先しつつ,情報案内設備などのあらゆるバリアフリー化設備の整備を進めます。
三つ,バリアフリー化の推進に当たっては,利用者の意見を十分聴き,それを反映させます。
四つ,ハード整備に併せ,市民一人ひとりが高齢者や身体に障害のある人などに対する理解を深め,積極的に手助けなどを行う「心のバリアフリー」を推進します。

次に,バリアフリー化の目標について説明します。
現実的,合理的なバリアフリー化の目標として,事業者が最大限努力できる改善方策をもって,京都市独自のバリアフリー化の目標としました。

まず,1日当たりの利用者数が5,000人以上の旅客施設では,平成13年度末現在,音声による運行情報案内や,ベンチ・待合所,プラットホームの転落防止策は,ほとんどの旅客施設で整備が完了しています。
しかし,段差の解消や誘導・警告ブロック,料金の点字表示,車椅子対応型券売機などの整備率は50%から70%台にとどまっています。
バリアフリー化の目標として,特に現在約57%にとどまっている段差の解消を,平成22年度末までに約92%にまで高めることとし,誘導警告ブロックや料金の点字表示,車椅子対応型券売機などの整備率も高めることとします。

市内の全旅客施設では,平成13年度末現在,ベンチ・待合所はほとんどの旅客施設で整備が完了しており,音声による運行情報案内・プラットホームの転落防止策・幅広タイプの改札口は約7割から8割の旅客施設で整備されていますが,その他の設備は約半数しか整備されていない状況です。
バリアフリー化の目標として,平成22年度末までに,これらの整備率をそれぞれ現在より約10%高めることし,特に段差の解消については,現在の約45%から約68%にまで高めることとします。

路線バスについては,ノンステップバスの導入を基本とした人に優しいバスの導入を進め,バリアフリー化の目標として,特にノンステップバスの導入比率を,平成13年度末現在の約7%から,平成22年度末に約63%,平成27年度末に約69%にまで高めることとします。

次に,5つの長期整備プログラムの内容を説明します。

1つ目は,重点整備地区の整備プログラムです。
京都市は,「重点整備地区」に選定した14地区について,順次,地区ごとに「移動円滑化基本構想」を策定していきます。そして,公共交通事業者,道路管理者及び公安委員会は,「移動円滑化基本構想」の策定後速やかに事業計画を作成し,互いに連携し,集中的かつ効果的にバリアフリー化事業を実施します。

2つ目は,旅客施設単独の整備プログラムです。
優先順位1として,公共交通事業者は,より整備優先度の高い「引き続き改善方策を検討する地区」又は「事業者の単独整備地区」に立地する旅客施設を他の旅客施設に優先してバリアフリー化を図っていきます。
また,優先順位2として,公共交通事業者は,1日当たりの利用者数が5,000人以上の旅客施設を5,000人未満の旅客施設に優先してバリアフリー化を図っていきます。

3つ目は,旅客施設周辺地区単独の整備プログラムです。
道路管理者などは,旅客施設のバリアフリ−化事業と連携し,道路の面的なバリアフリー化事業である「歩行空間ネットワーク総合整備事業」の区域に含めるなど,道路関連事業の実施に併せてバリアフリー化を図っていきます。
なお,京都市は,「歩行空間ネットワーク総合整備事業」を計画的に進めるため,平成14年度中に「京都市歩行空間ネットワーク整備基本計画」を策定します。

4つ目は,車両の整備プログラムです。
鉄軌道車両については,公共交通事業者は,車両の更新時にバリアフリー化された車両を購入することを基本とし,また,既存の車両についても可能な限りの改善を行うことにより,バリアフリー化を図っていきます。
また,ホームと車両の乗降口との段差や隙間について,できるだけ解消するよう検討を行っていきます。
乗合バス車両については,公共交通事業者は,車両の更新時に,ノンステップバスを基本としたバリアフリー化された車両を購入することにより,バリアフリー化を図っていきます。

5つ目は,ソフト施策その他の整備プログラムです。
行政機関,公共交通事業者,市民などは,互いに連携し,バリアフリー化設備に関する適切な情報提供を行うとともに,国民全ての責務である「心のバリアフリー」を推進します。
また,京都市は「重点整備地区」におけるバリアフリー化事業の進行管理を行うとともに,公共交通事業者などが単独で実施するバリアフリー化事業についての情報を収集し,ホームページなどを通じ,バリアフリー化の進捗情報を提供します。




この案内は,京都市都市計画局 都市企画部 交通政策課が担当しています。
住所は,〒604-8571京都市なかぎょうくてらまちどおりおいけあがるかみほんのうじまえちょう488番地です。
電話は,075-222-3483。ファックスは,075-222-3472です。
ホームページのアドレスは,http://www.city.kyoto.jp/tokei/trafficpolicy/barrier/index.htmlです。


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